NLPには“メタファー”と呼ばれるコミュニケーション技術があり、これはマスタープラクティショナーコースで修得するいくつかのメインテーマのうちの一つです。その秘密を少しご紹介しましょう。

注)「ここから先は、最後まで一気に読んでください!」

以前、私があるメタファーの勉強会に参加した時に、一緒に参加していた女性が、お友達のみどりさんという友人の話しを紹介してくれました。

 

その方が言うには、彼女はあることをきっかけに何かが変わったんだそうです。

 

彼女も一緒にある研修に参加していたのですが、その場には20人くらいの受講生がいました。目の前には、身体の大きなアメリカ人男性が、講師として座っていました。

 

実は彼女は、別の知人に誘われて来ていたのですが、その研修に心の準備もできないまま参加していました。でも少し興味のある内容だったので、会場の後ろの端の方に座って、目立たないようにして、研修が始まるのを緊張しながら待っていました。

 

というのも、彼女は子供のころから、先生にあてられて何かの発言を求められるのが嫌いでした。そんな時はいつも緊張して頭が真っ白になって、何を答えたのか分からないくらい恥ずかしくなって、・・・・だから、大人になってからも誰かの前で目立ったり、自分の意見を発表するのは避けていました。

 

自己紹介をする時間があると、彼女はいつものようにしどろもどろで、最小限の情報を口にして、すぐに話をやめてしまいます。そして、端の方で目立たないように人の後ろに隠れ、長い勉強時間でもできるだけ目を合わせないようにします。

 

ところが、そのアメリカ人講師は、講義のいたるところで参加者を指名しては、「質問はありませんか?あなたはどう思いますか?」などと意見を求めてきます。

 

 彼女は、心の中で「私を指名しないで・・・お願い、私は何も話せないの・・・緊張してしまうの・・・」とつぶやき続けていました。

もう、その講師の顔を見ることすらできません。

でもそれは、講師から見ると、むしろ非常に目立つ存在になってしまい、当然、講師から「はい、次、あなたはどう思いますか?」と指名されてしまいます。

彼女は、「・・・特にありません・・・」と答えるのが精一杯です。そして、「このホワイトデビル、私に声をかけないで、・・・そっとしておいて・・・」と心の悲鳴が聞こえてきます。

 

それでも長い研修の時間、何度も何度もいろんな人に「はい、次、あなたはどう思いますか?」と聞いているので、本当に「このホワイトデビルめ!」・・・と思うようになっていました。

 

その日は、何とか乗り切りましたが、研修は2日目もありました。研修2日目も相変わらずそのホワイトデビルは、受講生に意見を求め続けています。彼女にとっては、地獄のような時間です。

 

そして突然「はい、みどりさん、あなたはどう思いますか?」と聞こえてきました。彼女は心の中で「なんで、私の名前だけ覚えているの?・・・やめて、名前を覚えないで、私を指名しないで、・・・」

 

 

そういえば、別の男性参加者は、こんな話しを紹介してくれたのですが、・・・彼は少し体調を崩して入院していた時期がありました。

 

 その時、彼のいた大部屋には、“しんちゃん”という5歳くらいの小さな男の子もいました。日中はいつもお母さんが一緒にいて、看護師さんや担当医師が来るたびに「やだー、やだー」と言っては、ベッドにしがみついて、体温計で測るのも「やめてー、やだ―」・・・・注射となると大騒ぎです。

 

 そんなある日、しんちゃんは、体調も悪化してきたので“手術”をする必要が出てきたのですが、その子は「絶対に嫌だぁ~、こわいよ~、や~だ~」と泣き叫んでいます。

 そして、半ば無理やりお母さんに抱っこされて、看護師さんと一緒に担当医師のところに説明を受けに行ったようです。

 

 ところが翌日、その子は急におとなしく担当医師と一緒に“手術室”に入っていき、2時間後くらいに病室に戻ってきました。

 

 しんちゃんが麻酔から覚めると、お母さんが「よく頑張ったね、あんなに嫌がってたのに偉いね、・・・しんちゃんは、先生が魔法のお話してくれたから、手術受けてくれたんだよね・・・」と言いました。  

 

そう、子供といえば、そのセミナーで一緒に参加していた他の女性は、お友達の由美子さんがお子さんのために作った、短いおとぎ話しのことを教えてくれました。

 

昔々、世界のはずれに、プリン王国とショートケーキ王国がありました。

 

プリン王国の北の草原は、緑豊かで開放的な場所で、鶏たちが元気に走りまわり、自由に育てられ、・・・丘に住む女性たちは、濃厚な味わいの大きな卵を集めては、プリン工房に運んでいました。

そして、南の山側では、そよ風の中にのんびりとリラックスした牛たちが寝転がり、牛舎ではモ~~モ~~と歌を歌っているかのように鳴きながら、ミルクを絞られていました。

濃厚でスッキリとした香りで、最高に美味しい牛乳は、牧場の青年たちによって街のプリン工房に運ばれていきます。

そんな贅沢な原料で、プリン職人たちは世界で一番おいしいと自慢のプリンを一生懸命作って、世界中に売り歩き、平和に暮らしていました。

 

 一方、ショートケーキ王国では、山側に位置し国の半分の面積を占める広大な小麦畑で、男たちは小麦色の肌をむき出しにして汗を流しながら、世界で最もふんわりと焼けると評判の小麦を作っていました。

女性たちは、海からほど近い平地の苺畑で、しっかりと気を使いながら繊細で、宝石のようにキラキラと真っ赤に輝く苺を摘み取っては、丁寧に箱詰めしています。

 街のショートケーキ職人たちは、ふんわりとしたスポンジケーキに生クリームで飾りつけし、最後にその宝石のような苺をのせていきます。

 このショートケーキは、世界各地で「宝石と呼べれるほど、高価で美味しい芸術品」と評判で、街人全員の誇りでした。

 

 ある時、スイーツが大好きな旅人がいました。その旅人は、プリン王国とショートケーキ王国の噂を耳にしており、二つの街に立ち寄ることにしました。  

最初にプリン王国に立ち寄ると、旅人はプリン工房の職人から、「我が国のプリンは世界で一番おいしいスイーツだから、たくさん食べていきなさい」と言われました。

 本当においしかったので、「このプリンは本当においしい。だったら、芸術品と評判の隣の国のショートケーキは、さぞかし素晴らしいのでしょうね。」とついつい口に出してしまいました。

 

翌日、旅人は国境を越えてショートケーキ王国で一晩過ごすことになりました。ショートケーキ王国では、「我が国のショートケーキは、世界最高の芸術的なおいしさのスイーツだから、十分に楽しんでいきなさい」と言われたので、一口食べると“何とも言えない感動”がこみ上げてきました。

 そして、ついつい「これは、プリン王国のプリンにも負けてないな!」と口に出してしまいました。

 

旅人が街を去って数日後、「プリンが世界で最も美味しいスイーツ」というプリン王国、そして「ショートケーキが世界で最も美味しいスイーツ」というショートケーキ王国が、それぞれ世界各地に対して主張するようになりました。

そしてついに、二つの国は、どちらの国が世界で最も美味しいスイーツを作っているのかを争い始め、大きな戦争になってしましました。

 

これまでプリンしか作ってこなかったプリン王国の唯一の武器は“プリン”、そして、ショートケーキしか作ってこなかったショートケーキ王国の唯一の武器は“ショートケーキ”でした。

 

 そこでプリン王国は、相手にプリンを投げ続け、ショートケーキ王国は、相手にショートケーキを投げ続けました。

 

 さあ、プリン王国の国境付近は、ショートケーキの山ができてしまい、ショートケーキ王国の国境付近は、プリンの山ができてしまい、両国は大変な状況です。

 

 

 

『そうそう、NLPのメタファーは、相手の抵抗を回避して相手の無意識にメッセージを直接送る魔法のようなコミュニケーション技術です。あなたは、よりあなたが望む人生を手にするために、いま、どれくらいNLPを学びたいという熱意が高まっているのかに、気付くことが出来ますか?』

 

 

さて、プリン王国とショートケーキ王国の戦争が始まって数日後、歩いて海を渡り、山をひとまたぎして旅をする巨人がやってきました。巨人は長いこと歩き続けていたので、とてもお腹がすいていました。

ちょうどそのころ、ふと足下を見ると、両国の国境にはプリンとショートケーキの山があるではないですか。

 

巨人が現れて、両国の人々は茫然と巨人を見上げています。すると巨人は、右手にプリンの山をすくい上げ、左手にショートケーキの山をすくい上げました。

 

何が起こるかと不安な両国の人々は、巨人の方を不安げに見続けました。すると巨人は、国境近くの丘に腰かけて、プリンとショートケーキを一つにして、まるで大きなプリンアラモードのような塊を、ぺろりと食べてしまいました。

 

両国の人々は、巨人があまりにも豪快に、しかも笑顔で、本当においしそうにそれを食べてしまったので、自分たちのしていることがばかばかしくなってしました。

 

巨人が大きな笑い声をあげながら立ち去ると、両国の人々は大切なことに気が付き、その後は一つの国となって、世界最高のプリンアラモードを作り、人々の生活に平和が戻ったそうです。

・・・というお話でした。

その話を聞きながら、私とその彼女は、楽しい絵本にしたら良いのに、と勝手に盛り上がっていました。

 

 

しんちゃんですが、その担当医師は『しんちゃん、手術はね、夢の中に行くようなものなんだよ。夢の中で楽しく遊んでいるあいだに魔法をかけて、起きたら今のお腹が痛いのが消えてなくなっているんだよ』って話していたそうです。

 

 お母さんが、『先生の説明で勇気が出たんだよね』と言うと、しんちゃんは、夕暮れに照らされた顔を横に振って「お母さん、違うよ・・・僕ね、先生が、いっぱい“にこっ”ってしてくれたから、手術受けたんだよ」って返しました。

 

 それから、しんちゃんは、人と目があうたびに“にこっ”と笑い返すようになったそうです。

 

そうそう、あのホワイトデビルは、通訳を通す必要もなく、何度も片言の日本語で「みどりさん、どうですか?」と攻めてきます。

 彼女は、「・・・・」だまって、・・・そして突然大きな声で、

「私の名前を覚えないで、私は頭が真っ白になって、何も答えられないの」

と叫びました。

 

 それをきっかけに、彼女はその後の時間ずっと、周りの受講生とも楽しく話せるようになったのだと、彼女は話してくれました。

わたしが参加したのは、そんな素敵なエピソードをたくさん聞ける勉強会でした。

 

さあ、このストーリーから“あなたは、何を受け取りましたか?”